絶対観てね「通天閣」!!
一年ほど前になりますが、新世界に生きる人々の生身の活気と哀愁に満ちた 姿を愛情深く且つ軽妙洒脱に描かれた西加奈子著書「通天閣」に魅せられ、 ぜひとも舞台に描きたいと、あっと言う間に脚本を書いてしまいました。
それまでにも、直木賞受賞作「サラバ」をはじめ、歯に衣着せぬ関西弁によるパワフルで大胆且つ繊細でナイーブに描かれた「漁港の肉子ちゃん」「しずく」「地下の鳩」「こうふくのみどり」「白いしるし」「i」など数々の小説や、つい笑いが込み上げてくるエッセイなど、西氏の作品に親しんでいましたが、何よりこの「通天閣」に魅せられてしまいました。
彼からの連絡を待つ主人公雪の女心や、次から次に男を変えてきた母親への思い、振られた後の荒れ狂う雪の様子等々、手に取るように目に浮びました。何とも頼りない小山内君の姿も、工場長の姿も、老医者の姿も、オカマさんの姿も、街角に佇むジジイの姿も、どの場面も、次から次に目に浮びます。
そして何よりも、もう一方の主人公中年男の幼い子どもへの回想シーンは、女の子の仕草や表情まで読みとることができ、堪らなく切なくなりました。
個人的なことで恐縮ですが、母が病気で入院、周りの大人たちがそしらぬ顔をする中、私は健気にも家事をこなす小学生でした。当時面倒をみていた2歳の末の妹が親戚の叔父さん宅に養女に貰われていきました。まあ、誰でも皆、幼い頃の思いを引きずりながら大人になっていくのでしょうが、どうもこのような体験が「通天閣」への思いを深くし、私の何が何でも「芝居にしたい!!」と思い込む要因になったようです。
「通天閣」には「愛」と「救い」がいっぱいです。大人にそしらぬ顔をされた幼い頃の経験はやはり「愛」や「救い」を求め、その表現の場として今まで演劇に携わってきたように思います。とまあ、つまらぬ個人的なことですが、 今回この「通天閣」を「芝居にしたい!!」気持を突き詰めると、どうもこのようなことのようです。
というわけで、「通天閣」を何が何でも芝居にして、誰しも求め合う愛や、愛による救いや希望を、諸先輩方のご協力も得て、未熟ながらも道化座一同力を結集して、生の舞台で生の迫力で迫ります。そして、とにかく皆さまに「通天閣」をぜひとも観ていただきたく、絶対に観てね「通天閣」!!と相成りました。
ぜひぜひ、皆さまの熱い厚い応援、ご支援をお願い申し上げます!!
(一社)劇団道化座 渡邉(馬場)晶子
(おおやかづき)