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「明日の風」 パンフレットより


いまは昔、戦争を体験した大人たちは、学校でも家庭でも戦争への反省の思いを込め、それぞれの体験談を何気ない話の中で語り、平和への尊さを私たち子どもに示してくれていました。そんな中で育った私は、子ども心に戦争はいつかきっとあるのだろうなと思いながらも、生きている間に自分は戦争には遭わないだろうと高を括っていました。

 

 その後、日本は高度成長の波に乗りバブルを謳歌、その余韻のままにずるずると格差広がる“今”に至り、政治も経済も隠され見えなかったことが徐々に明らかになってきています。見渡すと、世界は対立を深め、大戦争の火種が各地に拡がっている状況です。生きている間は戦争の悲劇を目の当たりにすることはないと高をくくっていた私ですが、既にその火種の中に日本も組み込まれ、どうもそうはいかない様相です。

 

 ここに至って鈍重な私もようやく、日本の政治の腐敗ぶりは勿論、世界中が見ている中で平然と当たり前のごとく虐殺が行われているガザのあまりの非情さに大きな衝撃を受けました。皆、同じように幸せを求めて生きている同じ人間なのに、あってはならないことが世界中の人々が知る中で平然と行われ、一触即発、いつ世界を巻き込むことになるやもしれず、世界中が閉塞感に覆われています。いったいどうすれば、平和で穏やかな世になるのでしょう。

 先日、NHKの放送で日本に暮らすイスラムの宗教家クレイシ ハールーンさんたちの活動が紹介されていました。クレイシさんは「国や民族があるのは、仲良くするためにあるのです」と仰っていました。素敵な言葉です。人も同じですよね。国も民族も、企業や団体、家族や友人たちも、皆、それぞれ違っていて当たり前。違っていることを前提に互いに認め合い支え合うことができればと願わずにはいられません。

 

 この芝居のように奇想天外な展開でみんな仲良くなれればよいのでしょうが、それぞれの感情が先行し、なかなかそうはいかないのが現状です。だからこそ、一人一人が自分だけでなく他者の尊厳を尊重する日々の努力が必要なのだと思います。そんなことで世界の平和に繋がるのかと、何を暢気なことを言っているのだとお叱りを受けそうですが、いやいや時代は人々の願いや思いが作り出すものです。いま、なんとかいい世の中になればと願う人々は世界中にたくさんいるはずです。一人一人の小さな言動が時代を動かす大きな流れをもたらすと信じ、先ずは、身近なお父さん、お母さんの姿から世の平和を願って、今回の公演となりました。

 

 「世界で最初に飢えるのは日本」という言葉に触発されて書き出した台本ですが、農業のことなど全くの素人で至らぬことも多々あると存じます。お許しを請いながら、皆さまにお楽しみいただければと願っています。

 

おおやかづき



募金のご報告

#能登のために・Free Gaza

「明日の風」公演会場にて実施しておりましたガザ緊急支援募金と能登半島地震義援金ですが、皆さまのご協力により、合計¥136,519となりました。

劇団員やその他からの募金も合わせて¥200,000を¥100,000ずつ認定NPO法人ドネーションシップわかちあい様および石川県珠洲市役所能登半島地震災害義援金窓口へお送りいたしました。ご協力いただき、心から感謝申し上げます。