母からのおくりもの ~しあわせ探し~
人が幸せになるには何が必要なのか。元気な人も体が辛い人も寂しい人も、大地から力を貰い、お互いにつながりあう『居場所』の物語。
長年、農業を営む一家と畑仕事を手伝いにきた人々の姿を舞台に描き、笑いを交えた演劇を通して、これからの社会の在り様を楽しんでいただきながら、観客の皆さまとともに考えます。
のどかな農村地帯。源治(源ジイ)と亜紀夫婦が有機農業でなんとか暮らしを立てている。今日は、農作業を手伝いに来た友人知人が、畑で汗を流している。亜紀は手伝いに来てくれた人たちに、畑で採れた新鮮な野菜を味わってもらおうと、夕飯の支度に忙しい。畑から帰ってきた源治に対し、なぜか愛想のない亜紀。長年連れ添った二人だが決してしっくりいっているわけではなさそうだ。
有機農業に励んできた源ジイは、若い綾や孫娘美々相手に自然の生態系について語る。保育士をしている綾は農業に興味を持ちとても熱心だ。援農に来た人たちは、老人たちは老人たちなりに、また若者や子育て世代の人たちもそれぞれに悩みや問題を抱えている。
夕食の宴でも、源ジイは若者たちと畑や土そのものの持つ力や、今注目されている耕さない不耕起農法について熱く語りあう。老人たちからは、都会で一人孤独に暮らすより、年老いても農業を手伝いながら皆で一緒に暮せたらという話が出る。賛同した若者たちも加わって、農業と他の仕事の兼業による暮らし方はできないものかと話が弾み新たな生活の可能性に夢が広がる。
一方、亜紀は援農の友人知人には優しく接するのだが、夫に対しては素直に接することができない。そんな娘のことを気遣い、亡母が突如として姿を現わし、二人の仲を持とうとあれやこれや世話を焼き笑いを誘う。亡母の手助けにより、50年連れ添った源治と亜紀はそれぞれの思いを語り合う機会を得る。さて、源治と亜紀夫婦の心の修復は? また、老若男女がともに暮らす新たな生活は、夢で終わるのか?