「わが家の客」


「わが家の客」舞台写真

2018年度中国演劇大賞のベスト観客賞

喩栄軍「家客」待望の日本初演!

「わが家の客」の物語の発端は、1976年に北京近くで起きた唐山大地震です。登場人物の一人馬識途は上海からの出張中、一瞬のうちに24万人が亡くなったというこの地震に遭遇し、その後の生き方を大きく狂わされます。それは上海に残された妻、莫桑晩にとっても同じことでした。そして唐山大地震から40年、それぞれが老境にさしかかった今、唐山大地震で狂わされた人生を振り返ります。

ところで、この作品に登場する3人はどの幕でも同じ名前を持ち、だから同じ人物のように見えます。しかし彼らは、馬識途が1976年の唐山大地震に遭遇したことを分岐点にして、その後の40年間、異なる世界を生きてきたまったく別の人たちなのです。「もしも、あのとき」という言葉を繰り返しながら、本来ならやり直しのきかないはずの人生と生活を、演劇の魔法を使って3通りに描いていきます。



ストーリー

1976年文化大革命の末期、上海の男(馬識途マー・シートゥー)が出張中に中国北京近郊の唐山で起きた大地震に巻き込まれた。生死はわからない。そして、上海には彼の妻(莫桑晩モー・サンワン)が残されていた。物語は、その馬識途がもしも死んでいたら、あるいはもしも生きていたら、妻の人生はどんなふうに変わっていたか、彼が唐山大地震に遭遇したことを分岐点にして、喩栄軍は同じ登場人物で3つの異なる物語を紡いでいく。

【第1幕】もしも、男が死なずに戻ってきたら

立ち退きを迫られ引っ越し準備をする老夫婦(馬識途と莫桑晩)。夫は1976年に出張で唐山地震に巻き込まれて集金した金を失い、公金横領の罪に問われた。その後、夫婦ともに不遇の生活を生きてきた。

【第2幕】もしも、男が行方不明になっていたら

夫が唐山で死んだと思った妻は、その後、外国語大学に入学し社会学者として成功する。その間、著名なオペラ歌手夏満天(シア・マンティエン)と結婚し、そうして穏やかな36年がすぎていた。ある日、彼女が住む古い一軒家に死んだはずの馬識途が訪ねてくる。馬は革命烈士の遺児でその一軒家も元は馬識途のものだった。唐山で地震に巻き込まれたとき、集金した金を失った。そのため馬は上海に戻らず、唐山で別人として生き直していた。馬は唐山で陰ながら彼女を見守ることに徹していた。だが老齢に達し、残された時間が長くないことを知った馬は、妻への思いを断ち切れず、上海に戻ってきた。そして三人の奇妙な同居が始まる。

【第3幕】もしも、男の死が確認できていたら

夏満天と莫桑晩は幸福な老後を過ごしている。そこに誰かがやってきた?生きていたのか?なぜ、今ごろ戻ってきた?その目的は?老いたからこそ、もしあのとき違う選択をしていたならば、と後悔する。あるいは、この人生こそが自分の運命だと諦観する。もちろん輝いていた青春も、働き盛りの壮年期もあった。そして今、彼らはさまざまな感情の間で揺れながら、残された時間をどう生きればいいのか、考えあぐねている。

キャスト

  • 馬識途/林田鉄(四方館)
  • 莫桑晩/馬場晶子(道化座)
  • 夏満天/稲田喜之(千年座)
  • チェロ演奏/薄井信介

スタッフ

  • 作/井上ひさし
  • 作/喩栄軍(上海話劇芸術センター)
  • 翻訳/中山文
  • 上演台本/伊藤希言
  • 演出/小原延之
  • 演出助手/田村彩花・小田原ゆみ・札場千景
  • 舞台監督/宮内政徳
  • 照明プラン/久松夕香
  • 照明操作/染川充成
  • 美術プラン/小原延之
  • 道具/浅川恭徳・(合)渡邉コーポレーション
  • 音響/Motoki Shinomy
  • 音響助手/八谷尚毅
  • 小道具・衣装/向地よし枝
  • 映像記録/サカイヒロト
  • 写真/上村厚文
  • 制作/伊藤茂・秋津ねを(ねをぱぁく)・矢島博子・島田知子・渡辺晶子


写真集

2021/09/25 わが家の客 兵庫県立芸術文化センター